logbog 旅するように生きる

1993年生まれ。高校生で摂食障害発症。今も自分の心地よい生き方を模索しながら小規模多機能居宅介護施設で作業療法士してます。

温泉と海鮮につられて熱海。

先日、知人が主催していた[V字回復「奇跡の熱海」の秘密に迫るスタディツアー]というイベントに誘われ熱海に行ってきた。
と言っても私は出張飲み会ですと言われ温泉と海鮮に惹かれ参加した(笑)
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かつて社員旅行の代名詞としてピーク時の1960年代には年間約540万人の宿泊客が訪れていた熱海が、半世紀後の2010年頃には半分の約246万人に落ち込みそこからここ数年で20%以上も宿泊客数が急増し、「熱海復活」とよばれている仕掛人であり「奇跡の熱海」の著者・株式会社machimori代表取締役 市来広一郎さんの講演つき熱海の街巡りツアー+温泉+海の幸で楽しく懇親会で締めるというとてもおいしい内容なイベントだった。

diamond.jp
gendai.ismedia.jp
本についてや講演で話されていた熱海復活までの道のりはもっと文章が上手い人達がすでにまとめてくれている。
私は感覚で生きている人間なのであまりマーケティングの視点とか難しい話は出来ないけれど、今回聞いた街づくりの視点と私の本来の専門である作業療法の視点や、現在の職場である小規模多機能居宅介護施設でじいちゃんばあちゃんと生活している中で共通するものを感じたので自分のメモ書きとして残しておこうと思う。

熱海のリハビリテーション

私は講演の内容を聞いてメディアで取り上げられている熱海の「復活」って「リハビリテーションだ!」と感じた。
日本ではリハビリテーションという言葉は医療・介護に限って使われることが多い。でも本来のrehabilitationという言葉の語源に立ち戻ると
re→「再び」 ~ation「~する事」 そしてその間の「habilis」は「適した」とか「ふさわしい」という意味で、つまりリハビリテーションは「再び適した状態にする」とか「再びふさわしいものにする」という意味になる。リハビリ=訓練、運動ではない。訓練や運動はあくまで1つの手段であって、医学でよく言われるリハビリテーションはその人がたとえ病気が治っても治らなくても「その人らしく生きる権利を得る」という意味だと思う。海外では医療介護だけでなく様々な場面でリハビリテーションという言葉が使われている。
例えば古くは「ジャンヌ・ダルクリハビリテーション
ジャンヌダルクはイギリス軍の手におちて宗教裁判の結果「異端である」との宣告を受け破門され火あぶりの刑となった。しかしその25年後再審が行われ、まず「異端である」という宣告と破門が取り消された。この裁判は伝記などで「リハビリテーション裁判」と呼ばれている。つまり無実の罪の取り消し、破門の取り消し、名誉の回復など、全人間的な名誉や尊厳の回復にかかわる事をリハビリテーションとしている。他にも例えばいったん失脚した政治家の「政界復帰」を「その政治家がリハビリテーションした」と使うこともある。

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リハビリテーションの原点に立ち戻りたいとき私はこの本を解く読む。

今回の講演の舞台となった熱海はかつて首都圏からアクセスのいい温泉地として観光旅行や社員研修の代名詞であった熱海が観光客が急減、企業の保養所や大型温泉ホテルも廃業していき街やそこで暮らしている人たちに元気がなくなった。そこから今までと同じようにただ観光客が増加させ元に戻したのではなく、熱海に住んでいる人たちが街を歩き「熱海らしさ」を見つけながら主体的に持続可能な仕組みを考えながら熱海を盛り上げていることはまさしく「熱海がリハビリテーションした」と思った。

私の職場

私は今、小規模多機能居宅介護施設という介護施設で働いている。この制度はその人が住み慣れた地域で最後までその人らしく尊厳ある生活が送れるようにと作られたものである。その人らしい地域の暮らしはその人を取り巻く地域の人の支えがなくては成り立たない。もともと仲が良かった友達やサークル等の地域の色々な人や行政など様々な機関が手を結んで初めてその人らしい暮らしは成り立つ。

このその人らしい生活が送る為には本人の思いや、本人の持っている力を引き出すことと、生活が継続できることが必要になる。そしてその人や周りの環境の強みやビジョンをチームで共有して1人1人が主体的に動くことで初めて成り立つ。

街を歩く。熱海の強み・危機感の共有

熱海が変わるきっかけの1つに地元の人に地元の魅力を伝える「熱海温泉玉手箱(オンたま)」というツアーを開催したことや熱海で面白い活動をしている人や地域の課題を取材しそれを発信するサイトを作成したことが挙げられている。これによって今まで熱海の人は熱海は「何もない」とネガティブな感情を抱いている人が多かったが熱海の魅力や熱海の課題・危機感を共有できた。そしてこの活動に熱海市と熱海の観光協会が反応を示し協働してもらえることになった。
このように今までただネガティブに個人レベルで困っていた事が周りの資源や魅力を知り、行政も繋がる事で個人では出来なかったことがたくさん生まれた。

これはまさに私の働いている場でも同じだ。じいちゃんばあちゃんのことや周りの環境のこと、人生背景を知って初めてその人の思いや、その人の得意な事、周囲の環境の強みが分かってくる。そしてそれをチームで共有してそれぞれが自分事として捉えたとき初めて課題解決に向けて動き出す。

街のファンを作る。持続可能な街づくり。

これまでの従来型の団体で宴会等の時代から個人や家族で旅行に出かけ体験・交流するという温泉観光地のニーズの変化に合わせ、住民や別荘保有者・観光客の為の体験交流イベント事業や熱海の中心街「熱海銀座」の空き家店舗をリニューアルしCaféやゲストハウスなどを運営し熱海らしい魅力的なコンテンツを作りビジネスとしてもしっかり稼ぐことで持続可能な活動となり、熱海のファンを作る事で繰り返し来てもらう事に成功した。

これも私の職場でも同じだ。人は日々変化する。感情や周りの環境、自分の健康など様々なことでニーズや課題も変化する。臨機応変に変化していきかつ、スタッフも疲弊しない持続可能なプランが必要になってくる。そして地域の人にもけいぞくして関わりを持ってもらうことが必要になってくる。

繋ぐ人

いろいろと書いたけれど今回の講演で1番感じたことは熱海だけでなくどんな場でも自分で歩いてみれば魅力や課題は沢山知れる。それを知って、仲間を作って一つ一つを市来さんのように「つなぐ存在」がとても大事だと感じた。今回このイベントに私が参加したのも知人が誘ってくれたという人のかかわりが大きい。人と人が繋がり仕事も暮しも自分たちでつくりあげた熱海銀座はとても街の空気も人も生き生きしていた。それはきっと人と人が繋がりみんなで作り上げた連帯感や達成感、魅力を再発見したことでの街への誇りとか自分達が主体的に動いたからこそ得られたものの影響が大きい気がした。一方で熱海全体が活性化したわけではなく、少し道を外れるとシャッター街などもまだまだあった。

街つくりと介護は少し違うかもしれないけれど似ていると思ったプチ日帰り旅。
あれこれ言ったけど、熱海の町の温泉もごはんも最高だった。
近間で温泉というと私は箱根に行っていたけれど箱根は車で移動が多い。
それに比べ熱海は歩いて温泉、ごはん、お土産やなど色々なところに巡れてとてもコンパクトでプチ旅に最高だと思った。
私も熱海ファンとしてリピーターになりそうだ。

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講演で頭を使った後のランチは格別においしかった
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街巡り後で冷えた体を温めてくれた温泉。