logbog 旅するように生きる

1993年生まれ。高校生で摂食障害発症。今も自分の心地よい生き方を模索しながら小規模多機能居宅介護施設で作業療法士してます。

ケアすることで人の自尊心を傷つけている。

私の職場(小規模多機能居宅介護)の施設は団地の一室にある。そこに通ってくるじーちゃんばーちゃんは介護保険を使っている人が主で、市内の色んなところから通ってくるし団地に住んでる人もいる。

つい最近の団地に住んでるばあちゃんとのコミニュケーションでこれで良かったのかずっと私がもやもやししているものがある。

そのばあちゃんは職場と同じ団地に住んでいて身体的には年相応の能力で自分で歩いたりすることはできるが統合失調症アルコール依存症、買い物依存性、そして認知症という精神疾患がある。
利用当初は旦那さんに暴力を振るったり怒鳴り散らしたりだったがここ最近は症状も落ち着き穏やかで普段は職場の皿洗いや洗濯を干してくれたり明るく姉御肌で一部分だけ切り取るとなんでこんな元気な人が要介護なのかと思う人もいると思う。(ここまで落ち着くまでには5分おきに私たちが家に訪問したり丸1日マンツーマンでその人につきっきりだった時期があったり信頼関係を築くまでにとても時間がかかった。)

だが今でも一度不安のスイッチが入ると旦那さんを叩いたり事業所に通いに自分で来ては子供やスタッフに怒鳴り散らしてそれがおさまるまでマンツーマン対応になる。

私の職場はまだ新しい事業所で出来て4年の会社で私は学生の頃に開所準備からここでアルバイトをしてそのまま就職した。新卒で就職したのは私一人でいつまで経っても一番長くいるが年下のまま4年が経った。この4年の間、開所メンバーはほぼ辞めてしまい開所からいる現場のスタッフは私をいれて2人になった。

さっき書いたばあちゃんは10分前の記憶もなくなってしまうくらいの記憶力だがいつもと違う空気感や相手の感情を察したり感じる感性は人一倍強い。

だから誰だかわからないけどスタッフがなんとなく変わっているのはわかっている。そして不安なことを聞いてすぐ答えられるスタッフがどの人かも自分でわかっているので最近は私ともう1人の開所メンバーご指名で話に来る。

季節の変わり目に衣替えをすることが習慣のこのばあちゃんは自分が衣替えをして洋服の場所を変えているのだけれど移動したことを忘れてしまうので、探してるものがないと「誰かに盗まれた!」スタッフの誰かが夜中に入って盗んでるんだろう!」とすごい剣幕と大声で怒鳴り混んで来る。
今年もその衣替えの季節がやって来てついこの前もすごい剣幕で怒鳴り混んできた。
他の利用者さんもその声にびっくりしていたのでまずは家の様子をみたいことを伝え家に一緒に行った。

いつもだったら私は感情が収まるまで傾聴してすべてばあちゃんの意見を受け止める。けれどここ最近の波が大きいと感じていた私はこれ以上妄想を広げて新しいスタッフが犯人扱いされてもあとあと入れるスタッフが限られてしまったりそもそもスタッフが誰も入れない状況になってしまいそれはお互いハッピーではなくなってしまうと判断した。

私はばあちゃんが怒鳴っている途中で同じくらい大きな声で
こっちのスタッフは誰も入ってないしそこを信用してくれないと私たちはこれからサポートできなくなってしまう。うちのスタッフに物を盗むようなスタッフはいない。ものが無くなってる気がする不安はわかるけどこっちは入っていないからこっちもどうして良いか困ってるから落ち着いてこれからどうするか話そうと伝えた。
するとばあちゃんはもっともっとすごい剣幕でもっともっと大きな声で
若いくせに生意気だとかこっちは金払ってるんだどうにかしろとかここには書けないような罵声を発した。
そんなような言い合いを何回も繰り返しているとばあちゃんは突然「あー久々にこんなに大きな声だしてスッキリした」と清々しい表情で笑った。ばあちゃんは「ごめんな。私もボケてるからなわからないんだよ。でもなんか物がかき混ぜられてる気がするんだ」と弱気な声で話し始めた。
私はそこから傾聴に切り替え、昨日と部屋の様子は変わってないことを伝え、ないと言ってたものを探し見つけ衣替えをして移動したのかもねと伝え、私も人間出来てないから怒鳴ってごめんね。でもスタッフのこともおばあちゃんのことも信用してるからつい声を大きく感情的になってしまったこと伝えると
ばあちゃんは「私も言いすぎたごめんな。」
と話し始めた。
最後はお互いハグして今日も1日よろしくね。とことは終った。

ばあちゃんと感情で本気でぶつかってなんか嬉しかった反面、私のコミュニケーションは対等だったのかもやもやした。
ばあちゃんは自分がなんとなく最近忘れっぽいこともわかっていてどこにやったかわからない不安が怒鳴るという症状で表現され私に怒鳴ることで不安を訴えていた。
不安をもっと受け止めるべきだったのか。

他のスタッフにその事を話すと
スッキリしたと言ってるしそのコミュニケーションはあなたとばあちゃんの信頼関係でしか成り立たない。と言われた。
ケアとして良かったのかわからないけど
スッキリしたと言ったばあちゃんの気持ち良さそうな表情に私は救われている。

と同時に
ケアは人を傷つけると最近よく思う。
ケア「されている」「世話になっている」
それだけでじいちゃんばあちゃんの自尊心を傷つけている。
今回も物が見つかったことでばあちゃんは安心したが同時にそのばあちゃんはきっと私が移動したのかもしれない。私がボケてるのかという自信の低下のような気持ちも味わっていると思う。